仁和会総合病院 リハビリテーション科
仁和会訪問看護ステーション
作業療法士 髙橋健一
6月のケアカフェを行いましたが、その中のミニ講座の内容を簡単なコラムとしてご紹介したいと思います。
介護負担には、身体的・精神的・時間的・金銭的と大きく分けて4つあります。身体的なものは、老々介護、介護側の職員の高齢化もあり、また介護そのものが大変で、肩・腕・腰・膝にきたり、それが続く事で疲れが抜けなかったりします。
今回は身体的な物に絞ってお話をさせて頂きます。精神的・時間的・金銭的なものは、ケアマネージャーさんや地域包括支援センターにご相談頂き、介護保険(内外)サービスや、市の公的サービスをご利用下さい。
身体力学を活用して行うもので、介護を行う際に以下を意識して行います。
①相手にコンパクトな姿勢(小さく丸まる)を取らせ
②互いに重心を合わせ(同じ高さで近付き密着)
③支持基底面を広く取り(足を前後左右に大きく広げ)
④重心を低くし(膝を曲げて腰を落とし)
⑤体全体を使い(手先に頼らず、膝の屈伸を使う)
⑥腰は捻らず(足先を動く方向へ向ける)
⑦てこの原理を利用し(起きるなら臀部を支点に、自分の体重を上手く使う)
⑧引いて平行移動する(押さず、持ち上げず)
介護を行う上での基本として有名で、昔から言われていますが、やはり有用です。ただ、実践するのが大変で、最初の内は意識して続けていく事が大事です。コツはオーバーアクションで、特に③④は自分が力士になったつもりで大げさに腰を沈めてどっしり構えると、やり易いかと思います。
人力で頑張って持ち上げて腰を痛めず、福祉用具を上手く活用します。介護者側も無理に力を入れないので、介護される側も共に楽で優しい介護となり易いです。
・スライディングシート/ボード
・リフト/スタンディングマシーン/簡易移乗機
・スライディンググローブ 等があります。
使うととっても楽ですが、費用がかかる、方法を覚えるのが大変、使うのが面倒、でなかなか浸透しきっていないのが現状です。
ご自宅で介護されている方は、担当のケアマネージャーさんにご相談下さい。福祉用具貸与事業者さんは、福祉用具詳しく適切な物を紹介してくれます。
誰が言い始めたのか、リハビリテーションの業界ではこう言われています。介護される方もですが、介護者自身も、どんな人で、どんな事ができて、どんな事が難しいか?、どんな環境で何を行うか?、を把握する事が大事です。これがしっかり出来ていないと出来ない事を無理させる事になったり、逆に本人の力が発揮できず弱らせ、介護者が余分に頑張って疲れる、いわゆる過介助になってしまいます。
例)「ベッドサイドでポータブルトイレへ移乗」
□心身機能活動
・運動機能(筋力低下、バランス低下)
・認知機能(短期記憶低下、指示理解困難、危険認識低下)
・性格信条(他人の世話になりたくない、せっかち)
・動作能力(坐位不安定、起立要介助、下衣操作困難、立位時に足の踏み替え困難、後始末困難)
・下部尿路機能(尿意切迫感)
□環境
・起立時に前方を邪魔しないよう利き手側に手摺設置
・畳で滑るので滑り止めマット敷く
・立ち座りや小回りできるよう距離を空け、座面高を合わせ、ポータブルトイレ設置
・オムツやパッド、おしり拭きを手の届く所に準備
□リスク
・浅く座りずり落ち、立位時に膝折れ、危なくても1人で動く
□意思疎通
・「(こちらが)伝えた」と「(相手に)伝わった」は違うので、お互いに理解できているかどうか、分かりません。認知機能だけでなく、身体が弱っていると即座に動けなかったりします。
× 「1、2、3、ハイ(タイミング間に合わず)」
〇「1、2、3、・・・、ハイ(理解し掛け声の時には動ける)」
・動作指示は簡潔明瞭に、丁寧に説明しようとして話が長くなると、理解しきれず、何をすれば良いのか分からなくなります。
× 「ここに掴まって、足元気を付けて、立って(えっ!?(困惑))」
〇「立ちます」
□ワンポイント
家でも現場でも、限られた時間内ではとても難しい事ですが、介護される方の力を最大限に引き出せるとても簡単な方法があります。それは、「見守って気長に待つ」です。もちろん、それが出来るだろうと言う前提の基ですが、ご本人様にはその方なりの動くペースがあります。それを尊重できると、最大限にその能力が引き出されます。
介護負担には身体的・精神的・時間的・金銭的とあり、介護する側の高齢化もあり特に身体的負担は大きいです。身体的な介護負担軽減には、ボディメカニクスやノーリフトを効果的に使う事が有効です。評価をし、コミュニケーションをとり、介護者が頑張り過ぎず、介護される方に最大限動いてもらう事で、Win-Winになります。